みなさん、「お店が発行したポイントで、まだお客様が使っていないポイント(以下「未使用ポイント」と言う。)は費用にできないのかな?」といった疑問を持ったことはありませんか?
結論からいうと、ある要件を満たしていれば費用にできる場合があるとのこと。
法人税基本通達2-1-1の7によると要件を満たしていればポイントは前受けとして益金にしないことができるようです。
今回は法人税基本通達2-1-1の7が施行される以前はなぜ費用にできなかったのか、施行後はどうすれば未使用ポイントを益金にしないことができるのかをまとめていきたいと思います。
施行以前にこのような事例がありました。
とある小売業を営むAさんが各事業年度ごとに、未使用ポイントを費用として計上し法人税の申告をしました。しかし、課税庁によって更正処分を下されることとなってしまい、これに抗議したAさんは裁判を起こして処分の一部取り消しを求めましたが、棄却され処分が下ることとなってしまいました。Aさんのお店が発行していたポイントが費用として認められなかったのです。
では、なぜAさんの主張は認められなかったのか?裁判所の判断を見ていきましょう。(東京地判 令和元年10月24日 判決)
未使用ポイントについてこの判例が発生した当時、まだ法整備が整っていなかったため裁判所は『債務確定基準』を参考にしました。これは簡単に言うと、債務の発生を認めるには「費用が発生してしまう債務(ポイントの発行)が成立していること。」「債務に対して返済する事実(ポイントの使用)が発生していること。」「金額を合理的に算定できること。」の3点が必要になるといったものです。
この基準に照らし合わせると最初に挙げた債務成立要件(ポイントの発行)しか満たされていないので、今回の事例ではポイントを費用とすることは認められないと裁判所は判断したようです。
この基本通達が施行された後、まだ不明瞭であった未使用ポイントが益金不算入として認められるための要件が明確になりました。以下が基本通達の要件をかみくだいたものになります。
(1)お店が発行したポイントが、買い物などの取引が成立しなければ受け取ることのできないものであること。
(2)お客さんに発行したポイントが発行年度ごとに区分して管理されていること。
(3)発行したポイントが有効期限を過ぎてしまったり、もしくはお客さんが規約に違反しりといった、お店の責任の範囲外でやむお得ない事情があること以外で発行者が一方的にポイントを取り消すことができないことを規約や契約で明記されているもの。
(4)ポイントによる値引き金額が明らかになっておりかつ、たとえ1ポイント1クーポンであっても使用できること。
又は自社ポイントが同価値の他社ポイントと交換できること。
以上の要件を満たしていれば、益金の額に算入しないことができる可能性があります。
ここまで読んでくださった方で「もしかして自分のお店の未使用ポイントを費用にできるのでは?」と思った方、興味を持たれた方は身近な税理士さんに相談してみてはいかがでしょうか。
ポイントと税金については、以下のブログもあります。ぜひ参考にしてくださいね。
・ポイントと税金の関係について
→ポイントの税金①(基本編:ポイントに税金はかかる?非課税?)
・ポイント投資をした時の課税関係は?
→ポイントと税金②(ポイント投資)
・医療費控除の対象となる風邪薬代をポイントで購入した時の課税関係は?
→ポイントと税金③(風邪薬と医療費控除)
・マイナポイントの課税関係は?
→ポイントの税金④(取得時点で税金がかかるケース)
・ポイントがたまった時には税金はかからず、使ったときに一時所得になる・・・とは?
→ポイントの税金⑤(一時所得)
・ポイントを使ってものを購入した場合の消費税は?
→ポイントと税金⑥(消費税の処理)
・ポイントを使ったときに所得税の一時所得になるケースとは?
→ポイントと税金⑦(ポイント投資で一時所得が発生?)
・ポイントに係る税金の新聞掲載
→ポイントと税金⑧(朝日新聞掲載)
・自己発行ポイントと費用の認識
→ポイントと税金⑨(未使用の自己発行ポイントと費用の認識)
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